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旅で苦労するのは移動より宿泊でしょう。若かりし頃の一人旅では結構無茶もしました。
スイスのユングフラウへの旅もそうでした。
ジュネーブから夕刻インターラーケンに到着し、例によって簡単な食事を済ませて、ローカル線でグリンデルワルトまで足を伸ばした。が、さあ困った。お金は無いし、ホテルを探し歩くには遅すぎる夜中の1時です。
ひなびた駅舎のホームにはベンチが二つ。そのひとつには登山客らしい服装の男がひとり寝ている。登山靴にヤッケ、帽子を顔にのせいびきさえ聞こえてきそうです。
この身支度なら凍えることはありません。なにせ氷河の残る山に登る準備をしてきているのですから、雪洞でも眠れそうです。しかしこちらはそうはいきません。下界は夏ですから軽装です。この山の駅から上が秋から冬なのです。かと言って今から引き返すのも癪です。
リュックに読み掛けの新聞があったのを思いだし、それを広げて体全体に巻き付けました。まるでミイラですが、少しは冷え込みが違います。幸い風が無かったので助かりました。この方法は日本での山歩きにも何度か使っていました。アノラックやヤッケとアンダーシャツの間に新聞紙を挟んでおくと、がさがさとうるさいのですが、防寒にはなるものです。
気温は摂氏5度。流石に寒くて眠れませんが、始発列車の4時まではワインを飲みながら、新聞ミイラの格好で過ごしました。恐らく一日で一番寒いであろう時刻に始発列車が出ました。
急勾配を登る電車は初めから傾く準備ができています。つまり、ちょうどケーブルカーのように、窓にも傾斜がつけてあり、窓枠にワインのボトルを置いても滑りません。レールと車輪もしっかりと噛みあう歯車を使ってあります。
窓からの景色はまさに「アルプスの少女ハイジ」の世界です。急斜面の緑の中に草を食む牛の姿がそこここに見られ、赤や青の屋根の家が点在しています。そのはるか下のほうにちぎれ雲がゆったりと流れて行きます。
間もなく終点に着くと、そこからは氷河をくり抜いたトンネルを抜けて頂上を目指すケーブルカーが出ていましたが、全てを見尽くすと今度来たときの楽しみが無くなりますので、(本当はユーレイルパスを使って一週間の貧乏旅の途中で、宿泊はユースホステルか車中泊の身にはケーブルカーの料金が懐にひびいたからです)このケーブルカーは見送りました。
下山してインターラーケンからチューリッヒに向かいましたが、この列車の旅の間中アルプスを堪能しました。
あれから30年が過ぎましたが、結局今日まで、このユングフラウの氷河列車には乗っていません。ちょっと残念ですが、まだ行く可能性は十分にあると思っています。いや、そのためにも仕事を頑張りましょう!!
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