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パリの空の下(2)

本職の添乗員ほど多彩な経験はありませんが、それでもグループを引き連れての旅行をしていると、面白い場面に出あったり、ひやっとすることがあります。
同僚の中には飛行機の片方のエンジンが故障して飛行場に引き返したのもいますし、私の場合だと、出発の翌朝まだ成田空港のホテルに滞在していたことがあります。大雪で欠航してしまったのです。
グループのメンバーは、現地での仕事の日数が短くなることより、観光の時間がなくなることを嘆く声の方が大きかったのは事実です。
グループでパリのメトロ(地下鉄)の電車に乗って出かけ、点呼をとって見ると、一人足りないことがありました。ひとりずつ確認すると、のん兵衛さんの大山さんが欠けています。みんなを次の駅のホームで待たせて、最初乗った駅に戻ってみましたが姿が見えません。駅員に聞くと、改札機の切符の挿入と通り過ぎるタイミングが何度やっても合わず、五回ほどやって諦めて帰った男がいた、とのこと。
ホテルに電話をすると居ました。ろれつの回らない舌で「江須さん、おれはメトロと相性が悪いらしい。ホテルで待ってるから、晩飯は買って来てくれ」という。他のメンバーを隣の駅のホームで待たせているので、大山さんを迎えに行くことは諦めて、夕食と町中の観光を済ませてから、サンドイッチを買って帰ってあげたのでした。
また、現地の飛行場に着いて、入国審査の窓口まで来て、「パスポートがない!」と騒ぎ始めた女性がいました。
機内に戻って座席の周りを探してみると、ありました。座席の下に落ちていました。
エアラインのコマーシャルのように、航空会社の名前入りの白い旅行カバンの外ポケットにパスポートが半分くらい顔を出す、おしゃれな入れ方をしていて落したようです。
海外旅行で最も身近なトラブルはバス・トイレでしょうか。
最近は国内のホテルも洋風なバス・トイレ付きで、しかもバスタブの中の底から四分の三あたりに排水孔があり、外にも床に排水口を切ってあるものが大部分なので、慣れと設備の両面からトラブルを防いでくれていますが、ヨーロッパの古いホテルだとバスタブの底以外に排水孔が無いため、洪水のトラブルが頻繁に発生しました。もっともその前に、シャワーが出ないとかカランのハンドルがとれてしまった、なんてことも何度かありましたが。


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