酒というものに馴染み始めたのは比較的遅く、二十歳を過ぎてからでした。
タバコが高校三年生からだったことを思えば、随分遅いほうです。
高校時代にクラスで旅行などに行くと、仲間の中には必ず缶ビールをリュックの底に忍ばせて、水の冷たい滝などに出会おうものなら、喜び勇んで先生から離れた岩影などでそっと冷やし、気の知れた数人で乾杯するやつがいたものです。
もっとも先生の方も知っていながら知らん顔をしていて、帰りのバスの中で「最近のコーラは飲むと顔が赤くなるのか」とか「そのまま飲んだほうが水よりつめたかったんじゃないのか」と、軽くいじめて楽しんでいるところがあったものです。
私はそれほどアルコールが美味いとも思えなかったのと、家族に酒を飲む者が居なくて、正月の一升瓶が秋祭りのころまで忘れられているような家に育ったので、自分が酒を飲めるとも思っていなかったのです。
社会人になって付き合いで飲む機会が多くなると、流石にそれなりには飲みましたが、酔いつぶれることはありませんでした。もちろん酔いますが、前後不覚になることがなかったと言うことです。 二日酔いに悩まされたり、帰宅途中で小間物屋を開業したりしている内に、自分の酒量も分かってきました。日本酒なら五合が限界でした。晩酌は一合程度でした。
それでも結婚して子供が産まれると、風呂にいれたり、おしめを替えたり、子育ての一部を受け持つので夕食に飲むビールは小びんでも中缶でもなく、その半分の「豆缶」でした。
というのは、一度飲んで子供を風呂に入れて手が滑って湯船に落とし、それ以後子供が風呂嫌いになったので、カミサンが強制的に豆缶にしたような気もします。
まあ、落された子供も迷惑だったでしょうが、豆缶にされた父親も、自分の不注意からとは言え、少々不満が残りました。しかし、我慢できないほどでもありませんでした。
あれから二十年近くになりますが、酒量は徐々に、徐々に増加の一途を辿り、今では瓶ビールや一升瓶で飲むと、数日でボーリングのピンの代わりができるほどになってしまいました!
今では「酒なくして、何の人生ぞ」の境地です。
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