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パリの空の下(1)
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仕事でフランスへ出張することがありますが、時折興味深い経験をします。
本日は、パリのスリの手口をひとつ、ふたつ紹介しましょう。これは私の実体験です。
ある日、地下鉄を利用してオペラの裏手のサン・ラザール駅からポルト・クリニャンクールへ向かっておりました。クリニャンクールは「ノミの市」で有名な街で、多くの旅行者が掘り出し物を期待して集まるポイントです。ここも店の品物に気を取られた買い手がよくスリにあうところです。私の場合はそこに行く車中で出あいました。地下鉄はそれほど混んでいたわけではありませんが、坐る席がないため、立ってドア近くの手摺りにつかまっていました。そこに若いカップルが乗り込んできて、熱烈なキッスを始めました。
日本人の私はそういう風景に慣れていませんので、珍しそうにじっと見つめても悪いと思い、件の二人に背中を向けて車内の広告を眺めることにしました。ひと駅通過したころに体の右側にかけているショルダーバッグの後部、つまり背中側に異常な触感があり、思わず手で確認すると人の手が勢いよく離れて行きました。
口の空いたバッグの背中側から手を突っ込んで物色していたのです。振り返るとキッスをしている筈の男の目が冷たい光りを帯びて私の方を見ていました。周りには人はいません。明らかに彼の手が私のバッグに忍び込んでいたのでした。
もうひとつは混みあった電車の中でズボンの後ろポケットに人の手が入り込んでいたこともありました。被害はありませんでした。これはいわゆるスリの体験です。
最後のひとつの経験は仲間の経験です。
日本人の業界関係者を十人ほど引き連れて、工場視察の旅行をしたときのことでした。仕事の後、地下鉄で市内観光に出かけました。ムーランルージュに行くためピガール駅にむかっていた時のことです。ピガールは新宿の歌舞伎町のような歓楽街です。列車内でグループの人たちと、駅に降りてからの待ちあわせ地点の打ち合わせをしていると
「江須さーん」
と叫び声がしました。
車内を見回すと少し離れたところで、二人の男に両手を抑えられて、必死の形相でこちらに向かって叫んでいる近藤さんの姿が見えました。
グループから離れて一人いるところを襲われたのでした。
「近藤さん、今いきまーす!!」
大声をだして向かうと、丁度駅に滑り込んだ列車のドアが開き、近藤さんを押さえていた二人の男は、人の流れにのってドアから逃げて行きました。
彼らは近藤さんを両わきから押さえて、おそらくもう一人の仲間のスリ役がいて、駅に着くタイミングを計り、財布を強奪し逃げる計画だったと思われます。パリは地下鉄に限らず、観光スポットのジプシーの子供や、置き引きなどがごく普通に出没します。
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パリのムーランルージュ(赤い風車)
この辺りがすりのメッカです。
気をつけましょう。 | |