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ケルンの夜はふけて・・

今度はドイツ絡みのお話をひとつ。ドイツのケルンへ出張した時の話です。ケルンのホテルが満杯で、ボンの小さなホテルに宿泊しました。当時はまだ東西ドイツが統合される前で、ボンが西ドイツの首都でした。
私は添乗員ではなく、技術視察ツアーのオーガナイザー兼通訳として十五人ほどのグループを引き連れて、幾つかの自動車部品メーカーを訪問しておりました。一月の寒い時期で、ケルンもボンも雪に埋もれていました。夕食時、ホテルの食事では面白くないということで、町中のビアホールにでかけました。アコーデオンの演奏で、皆楽しく唄っているホールでした。
私はドイツ語は出来ません。まあ、ビッテ(プリーズ)、ダンケン(サンキュー)くらいは言えますが、とても話せるレベルではありません。現地のガイドさんはもう帰宅した後ですから、やむおえず私が俄ガイド役を引き受けて、英語でウエイターと交渉しましたが、ほとんど英語は通じません。私の英語もいい加減ですが、相手もいい勝負でした。メニューを見ながら、グループの皆がビールを始め思いおもいのものを注文し始めます。
個人注文だと会計が大変だから、全員おなじものを注文しようということになり、ウエイトレスにお勧め品を聞くと、「アインス」とかいうのがとても美味だと言います。豚の肩の肉の煮物だということなので、それにしようと言うことになりました。大きな円いテーブルに十五人が陣取り、ビールの泡がこぼれそうな大きなジョッキが十五並びます。
そのあとウエイトレスが次つぎと運んでくる皿を見て、みんな感嘆の声を上げました。大きな皿に切り干し大根の様な煮物が山になり、その横に巨大な肉の塊が鎮座していたのです。しかも十五皿!豚の肩の肉とは、肩肉のスライスではなく、骨付きの肩一本丸ごとの塊だったのです。一皿で三、四人前はありそうな皿が十五、ジョッキが十五。ちょっとしたものでした。おかげでドイツの夜、ドイツの味を心ゆくまで味わうことができたのでした。

もうひとつはちょっとエッチな方面の話です。
巨大な肩肉を食べた翌日、メンバーの一人が「江須さん、ドイツには面白い遊び場があると聞いたんだけど、案内してくれませんか?」。
意味はわかります。ドイツには公娼制度が残っています。日本にはかつて、赤線と称する公娼がありましたが、私が生まれたころに廃止されました。わたしの仕事の基地のパリには公娼制度はありませんが、街娼があちこちに立って客を物色しています。いや、客から声をかけられるのを待っています。
実は、ドイツに行ったのはこれが二度目で、殆ど地理を知りません。ガイドは五時で帰ってしまいますし、残業してもらうにしても女性ガイドに頼める内容ではありません。そこでチャーターしているバスの運転手と片言の英語で交渉です。これが片言どころか殆どドイツ語でチンプンカンプンです。仕方ないからそのものずばり、エロスセンターはないか、と聞くと一発で分かりました。このバスで連れていってくれ、と言うとオーケーの返事。
こうして、十五人のグループは、高速道路(アウトバーン)を疾走し60人乗りの観光バスで夕闇せまるケルン郊外のエロスセンターに乗りつけたのでした。ただし、バスを何時間も待たせるわけには行きませんから、希望者を現地で降ろして、あとは電車で帰ってもらうことにし、興味の無いひとはホテルまでバスで帰ることにしました。
「本日の技術視察は順調に終了しました。これから始まる技術視察に関しては、日本人の誇りをもって、使命を果たして下さい。今回に限り、いつも行なうメンバー点呼は行ないませんので、各自自己の責任で無事ホテルに帰還されることをお願いします」。メンバーの約半数が下車しました。
わたしも興味がないわけではありませんが、カミサンが恐いのと、病気も恐い。それにリーダーはメンバーに間違いがあってはいけないので、ホテルで待機することにしました。がらがらのバスでホテルに帰り、残ったメンバーで夜のボンを散策し、仕上は前夜同様、豚の肩肉でした。


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