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カラテ!ジュ−ドー!!

数ヵ月ですがフランスで暮らしたことがあります。
 パリから西へ二百キロほどの所にトウール市という街があります。
 アテネフランセ(ご存知とは思いますがお茶の水にある語学学校です)のフランス人教師が留学に適しているとして推薦する街のひとつです。
 発音が明快で、日本人の耳に聞きやすいフランス語を話す地域としてフランス語の先生の間で評価の高い街です。また、トウールを中心とするロレーヌロワール川のほとりに開けた「フランスの中庭」とも称される落ち着いた環境の、緑の多い、しかも、これが重要なのですが美味い白ワインの生産地でもあるのです。

この地方を構成する近隣の街、村には多くの城が点在し、博物館になっている城、今でも人が住んでいる城などいろいろですが、フランスを訪れる観光客の多くが一度は足を運ぶ土地でもあります。
 このツール市の外国人語学学校とラブレー大学の聴講生としてしばらく滞在していたのですが、近くのリセに通う女の子と知りあいになりました。きっかけはその子の学生寮のロビーに卓球台があることを人づてに知り、運動不足解消のため時折通っているうちに友達になったのです。ショートカットヘアの理知的で可愛い十六才の子でした。

ある日、彼女の母親からのお願いだということで、その母親が社会の教師をしている小学校で、授業の中で日本のことを話して欲しい、と言うのです。あまりフランス語は話せませんでしたが、快諾しました。

次の土曜日、トウール市から北へ三十キロの小さな町の小学校に行きました。クラスに入ると二十人ほどの子供たちが私を迎えてくれました。先生が簡単に紹介をして、私の番です。近くの図書館から日本紹介のスライドを借りてきてあり、それを上映しながらのお話しということになりました。

日本の典型的な景色が映るのですが、中には、どうかな?と言うものもあります。京都の舞妓や、やっぱり着飾ったゲイシャの写真、すげ笠にミノを着た田植え風景・・・・・。少しづつ注を加えて修正しながら「現代ニッポン」を紹介しました。
 最後に先生が生徒達に向かって「質問やお願いがあったら言いましょう」と言うや、「カラテ、カラテ!」「ジュードー、ジュードー!!」と声が上がります。先生が困った表情で私を振り返ります。ここで引っ込んでは日本人の恥とばかりに、「ウイ(OK)」と答えてしまいました。柔道は少し授業でやって「型」だけは出来ますが、空手は全く知りません。  
それでも何とかしなければなりません。クラスで一番ワンパクそうな男の子を選んで、彼の左襟と右腕をつかんで、背負い投げを掛けます。小さな体が弧を描き半転します。もちろん最後は床で背中や頭を打たないように軽く引き上げて止めました。
子供たちの間から驚きの声と歓声が挙がりました。投げられ役の子は一躍英雄になりました。「ぼくも投げて」「わたしも投げてみてよ」と、次つぎに「投げられ役」が続出です。
 つぎは難問の「カラテ」です。まさか本当に当てる訳にもいきませんし、実は「型」も知りません。でも、男の子の間では空手の方が人気があります。そこで、映画で見覚えた握り方で、少し腰を落とし、「正拳」とでも言うのでしょうか、真っすぐ正面の空を気合とともに突くと、また歓声です。
 ホントは書道でも見せて、墨の芸術論?でも展開したかったのですが、まあ、日本とフランスの交流にほんの少しは貢献できたでしょうか・・・・・。

 

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