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「いつまでも、いつまでもお元気で」の書評


「いつまでも、いつまでもお元気で」

知覧特攻平和会館・編  草思社・刊 \1,050


 (2009年3月、ある機関誌の春の号にボランティアで掲載した書評です)

或る日曜日、娘の机の上に水色の小さな本があったので手に取って見た。

最近は仕事と家庭の雑事に追われて、ビジネス書以外は殆ど読んでいない。この厚さの本ならすぐに読めるだろうと思って、ぱらぱらめくってみると、見開き2ページの美しい写真を背景に、昭和20年に出撃した特攻隊員たちが、残してゆく家族に宛てた遺書、遺詠が浮かび上がってきた。

部屋に帰って来た娘が言った。1頁読む度に涙が溢れ、次のページに進めない、と。

ここにある特攻隊員達の言葉は、そのままに読むのが良い。思想も宗教も政治も忘れて、20歳前後の若者の姿をイメージしながら、その人の口からその言葉が発せられるのを思い浮かべれば、それで良い。

二文字の言葉もあれば遺詠もある、家族への、父母への、兄弟や親戚の方々への言葉もある。そこに有るのは遺して行く人に対する万感の想いである。家族を心配させないための明るく勇ましい言葉の間から、本人とその手紙を受け取った家族の嗚咽と慟哭が聞こえて来る。

自らを振り返って、自分が同世代の頃、このような言葉を残して死出の旅路に踏み出すことができただろうか。今、彼らと同世代の我が子を、国のため、家族のために「万歳」と言って送り出す事が出来るだろうか。「否」である。

子供の頃の社会科の教科書に、世代別の人口ピラミッドのグラフが載っていたのを覚えている。普通ならなだらかな曲線を描く筈だが、或る年齢層の部分が断崖のように切り立っていた。それは戦争に駆り出された世代の男性のグラフだった。あれは、私が未経験の、過去の戦争を実感した最初だった。その後、様ざまな場面で戦争の現実を目の当たりにすることがあったが、ここ暫くは日常の些事に心が埋没していた。久し振りに「死」に静かに向き合う休日ではあった。

こうして日本の過去の傷跡を辿っている今も、世界の各地で同じ思いを抱きながら日々を過ごしている人びとがいることを思うとき、争いを止める方法は無いものかと暗澹たる思いに駆られるのは私だけではないはずである。

また、生意気盛りの娘だが、この書の1ページ毎に涙する純粋さはいつまで持ち続けて欲しいとも思った。

この本を出版した草思社は「間違いだらけのクルマ選び」、「声に出して読みたい日本語」、「清貧の思想」などベストセラーを出した出版社であり、また、北朝鮮に拉致された横田めぐみさんの母の発言をまとめた「めぐみへ 横田早紀江、母の言葉」も出版しているが、昨年(2008年)1月に民事再生を申請し、同年8月から文芸社の出資により新体制で再出発している。再起の証として、これからも良書の刊行を続けて頂きたいものである。
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